ABOUT PARKOUR

パルクールとは

パルクールは、20世紀後半のフランスで形成された身体運動文化を起源とする。

創始期には、軍隊教育や合理的身体運動の研究から影響を受けた訓練思想が基盤となり、都市環境を活用しながら効率的に移動する身体技法が発展した。この思想を背景に、デヴィッド・ベルが体系化を進め、「障害を越え、自らを鍛え続ける」という精神が文化の中心に置かれていった。

ベルはその後、国際体操連盟(FIG)における初代パルクール委員長として、パルクールの理念と技術を国際的に整理する役割を担った。彼は文化の精神性を守りながら、世界的普及のための基礎を整えた指導的存在である。

その後、ベルの意志を引き継ぎ、シャルル・ペリエールが委員長に就任し、現在も国際体操連盟パルクール委員会を率いる中心的人物として活動している。ペリエールは、合理性・安全性・教育的価値を重視する国際基準を整備し、パルクール本来の哲学を尊重した発展を世界的に推進している。

パルクールは、跳ぶ・登る・越える・といった移動の基本動作を基に、心身の統合的成長を目指す総合的な身体文化として受け継がれてきた。技術の誇示ではなく、自己鍛錬と環境との対話を重視する姿勢が特徴であり、仲間と互いの安全を尊重し合うコミュニティ文化も深く根づいている。

こうした価値観はフランスから世界に伝播し、多様な地域で独自の実践が生まれた。日本でも早期からコミュニティによる取り組みが発展し、哲学的価値と技術研究が両立する形で教育文化が育まれてきた。

現在、日本体操協会パルクール委員会は国際基準を踏まえ、世界とつながりながら正しくパルクールの発展を支える取り組みを進めている。パルクールは今もなお、心身の鍛錬と人間的成熟を追求する文化として進化を続けている。

世界各国のパルクール選手が交流している画像。

スポーツとしてのパルクール(現在)

現代のパルクールは、文化的背景を保持しながら、国際的スポーツとして体系化が進められている。

2017年、国際体操連盟(FIG)がパルクールを正式に部門化し、技術基準、安全基準、競技規則の整備が国際的枠組みの下で開始された。FIGは初代委員長デヴィッド・ベル、続くシャルル・ペリエール委員長の指揮のもと、文化の精神性を損なうことなく、競技形式の国際標準化を推進してきた。

現在の競技パルクールは「スピード」と「フリースタイル」の2種目で構成され、障害物空間を最も速く、あるいは最も創造的に移動する能力が評価される。競技でありながら、自己鍛錬・成長・環境との適応という本質的価値が重視され、技術の美しさや身体操作の精度、危険回避能力も重要な要素となっている。

世界各国で大会が開催され、国際大会では世界ランキングや世界選手権が整備され、競技者の育成・普及・研究がグローバルに進んでいる。

日本でも、日本体操協会パルクール委員会がFIGの方針に基づき活動を行い、国内大会の運営、指導者育成、安全基準の普及などを体系的に進めている。競技選手のみならず、ジュニア世代からの教育的プログラムも広がり、心身の発達を支えるスポーツとして社会的価値が高まっている。

技術的洗練と創造性の両立が求められる点が、競技スポーツとしての特性であり、同時に、環境への適応を通して自己を高めるという文化的哲学とも連続している。競技化によって表現領域が拡張され、一方で、文化としてのパルクールが持つ「自由」「探究」「成熟」の価値が再確認されている。

日本と世界は互いに学び合いながら、パルクールを文化・教育・スポーツの三側面から持続的に発展させている。その中心には常に、心身の成長を追求するパルクール本来の精神が据えられている。

  パルクール選手が競技をしている躍動感あふれる一枚。